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多様性が活きる組織づくりを目指して、FFS理論を活用 ~経営チームへの活用からはじめ、全社に拡大 

多様性が活きる組織づくりを目指して、FFS理論を活用 ~経営チームへの活用からはじめ、全社に拡大 

お話を伺った方:今井のり 様(最高人事責任者 CHRO)

会社名:株式会社レゾナック

業種:化学

  • 導入時期:2022年〜
導入前の課題
  • 新入社員育成や部門ごとの課題に対して活用するため、CHROの判断で、経営チームの関係性構築に活用したのがスタート 。その後は、その後はHRメンバーが導入を管轄。
主な取り組み
  • 社長とCHROが各拠点を回って行っているタウンホールミーティング等でも紹介
  • ワークショップ実施やオンボーディング支援など、部門からの相談に対応
導入効果
  • FFS理論をもとにした個性認識が共通言語となれば、アンコンシャスバイアスをなくしていける
  • 多様性を活かした共創が起きることが、会社としての価値の源泉
  • 1人ひとりのポテンシャルが解放されていくことを目指す

―FFS理論に関心を持ったきっかけを教えてください

今井さん 当社は2023年に2社が経営統合して発足したのですが、関心を持ったのは統合準備をしている頃です。最初に使ったのは、経営チームに対してです。こういう理論があることは人事コンサルティング会社の人に教えてもらったのですが、人と人との関係性構築に活用できる点に興味を持ちました。それで現社長と私を含む4人の経営チームに対し、お互いがどういう個性で、どうしたら補完し合えるかという議論に使ったのです。とてもおもしろい経験でしたし、外部採用で参画した人のオンボーディングにもなりました。

―チーム分析をすると、マネジメントスタイルによる違いも見えてきますよね

今井さん この4人の場合、階層型マネジメントよりフラット型のほうが、補完関係が起こりやすいという結果でした。社長の個性もあいまって、ぜひ役員間はフラットな関係性でいきましょうと最初に話せたのはよかったです。

―その後はどう進めたのでしょうか

今井さん これは実践的に使えると思い、HRメンバーに話をしました。そうしたらHRメンバーが積極的に動いてくれて、翌年には新入社員育成に使うことになりました。指導役も含めて全員が受検し、相互理解に使ってもらっています。他に「経営陣全員に受検してもらう」や「経営陣の受検結果を統合報告書に載せられないか」というのも前後して進めたのですが、これらもHRメンバーが動いて実施してくれました。

―統合報告書に、4象限における経営チームの個性分布を載せていらっしゃる件ですね

今井さん いま、会社の方針を伝えるタウンホールミーティングやラウンドテーブルを行っているのですが、そうした場でも活用しています。社長と私で各拠点を回りながら対話しているのですが、やはり私たちの個性を知ってもらうほうが腹落ち感が出てきますからね。最初の自己紹介でまず個性の紹介をし、変革期を担うためのチーム分布という説明もしています。

―皆さんの反応はいかがでしょう

今井さん 分布図が直感的にわかりやすいのでしょうね。人間関係を適切に扱えるツールということで、かなり興味を持ってくれます。良しあしではなく組み合わせの話であり、事業フェーズによって必要な組み合わせは変わるという点は、紹介時に伝えています。どの業務も基本的にはチーム仕事ですから、自部門で活用するための問い合わせは結構寄せられました。

【活用の方法】アンコンシャスバイアスの解消にFFS理論が役立つ

―全社的なFFS理論の活用という点では、どのような状況ですか

今井さん 使い方は部門にゆだねています。課題意識に合わせて使わないと、効果も出ないですからね。相互理解に使いたいということでワークショップを実施したり、オンボーディングの場面で使えないかという相談に対応したりしています。

―認知は徐々に広まっているのでしょうね

今井さん 新しいことをうまく進めるために使える手段だと、徐々に認識してくれているようです。当社のビジネスモデルは、そもそも人と人とのコラボレーションが欠かせません。当社は「機能性材料メーカー」を目ざしていますが、機能性材料というものに公式はなく、ニーズに合わせて技術を組み合わせ、社内外の人と共創しながらつくっていくものです。つまり共創によるイノベーションが当社の価値の源泉で、その是非が死活問題にもなってきます。FFS理論は、そうした共創活動と非常に親和性があると捉えています。

―違う個性の人が組み合わさることの価値は大きいと思います

今井さん よく「多様性のマネジメント」と言いますが、それは1人ひとりが考え、多角的にものを見ながら意見をぶつけ合っていけることだと、私は考えています。大事なのは、アンコンシャスバイアスの排除。どうしても人は、性別や国籍、所属部署といったラベルで相手を認識しがちです。しかしラベリングは、コミュニケーションの遠慮や同調圧力を起こしかねません。FFS理論を共通言語にできれば、そうしたラベリングを排除していけると思っています。

―もう少し詳しく教えてください

今井さん たとえば「FFS因子の4象限の組み合わせで言うとどこに位置するか」という共通言語が全員にあれば、そこが相互理解の起点となります。お互いの個性が理解できれば、コミュニケーションの仕方がわかります。自分と違うからといって、排除することにはなりません。つまり多様性ですね。お互いの理解を進めることで、1人ひとりのポテンシャルが解放されていけばと強く思っています。

【活用の意義】1人ひとりが力を発揮する組織を目指す

―チームづくりの重要性は、もともとお感じになられていたのでしょうか

今井さん 自分がリーダーになった時に、チーム運営についてかなり考えたことがあります。私自身のキャリアとしては、わりと短いスパンでの異動を繰り返してきました。領域としても、オープンイノベーション推進を担当したりアメリカに駐在して営業したりと、幅広く経験しています。逆に言うと、ある専門領域に強いということではありません。リーダーになった時、ほとんどのメンバーは私よりベテランで、その領域に長けた人ばかりでした。そこでのチーム運営はどうあるべきなのか。1on1をやったり、チームビルディングの場をつくったり、試行錯誤していました。

―他の人にも起こり得る悩みですね

今井さん 相互理解ができれば、お互いの話がかみあわない、わかってもらえないという事象は減ります。FFS理論を導入したことで、その点はやりやすくなりました。たとえば拡散性が高い人は、口癖のように「なるはやで」と言いますが、着実に進めたい保全性タイプにとっては、そう言われても困るはずです。違いがわかっていれば、相手に合わせて説明を補足できます。それが、摩擦を減らす効果ももたらしてくれます。

―今井さんご自身は、キャリアを積むなかで個性を生かせてきた感覚がおありですか

今井さん 私は、新しいことに積極的だという拡散性が最も高く出ていて、次いで受容性・弁別性も高いという個性です。振り返ると自分の興味のあることには突き進むし、部門の壁を気にせずに動くし、まさに拡散性の特性が前面に出ていたと思います。職務としても合っていて、上司たちも容認してくれたことで、個性を発揮しやすかったのだろうと今にして思います。一方で、役割責任は必ず果たすことを意識してきました。そこで信頼を得ないと、単に「自分の興味だけで動く人」になってしまいますからね。

―心がけてきたことはありますか

今井さん どんな仕事でも自分事として取り組むことでしょうか。オーナーシップを持つことが、信頼を得るうえで大事な要素だと思っています。しかも、何であれ自分なりの楽しみを見つけて取り組むこと。継続するなかで組織の信頼も増え、やりたいことが徐々にできるようになったと思っています。

―他方で、いろいろなことの先駆者として活躍されてこられた印象もあります

今井さん 私の根底には「ルールは壊すもの」というのがあって、変革は趣味かもしれません。昔、シリコンバレーの人たちと仕事をした時に、そこで起こっているダイナミズムやスピード感に非常に刺激を受けました。当時の日本は、社会的な男女差もまだ残っていたので、「1人ひとり」を見られる社会であるべきだと強く思ったのです。そこから、おかしいと思った状況は変えようとし続けています。ただし、周りとの関係性には常に配慮してきました。周囲からのサポートがあってこそ変革をしていけますからね。

【今後の展望】共創を増やすことが、価値創出の源泉

―人材活躍に向けて、どのような取り組みを進めているのでしょうか

今井さん 1人ひとりを見ていくために、タレントマネジメントの仕組み化を進めているところです。大事なのは表面的なスキルや実績だけではなく、いかにポテンシャルまで見ていけるか。そこに個性の情報も関わってきます。また、事業フェーズや業務特性に応じて適するチームが組めるよう、バランスのよい人材ポートフォリオも必要です。FFS理論を導入したことで、そうした議論の素地ができてきました。

―今後はどのような展望ですか

今井さん お客様のニーズにあった革新的機能をたくさん生み出し、発展していける会社を目指しています。そのためにはR&D現場でのイノベーションが欠かせません。現場でさらなる共創が生まれるようにフォーカスしていけたらと思っており、そこでFFS理論のさらなる活用も進めていきます。

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