人事

自己理解・相互理解・相互尊重が組織の急成長を支えた事例

自己理解・相互理解・相互尊重が組織の急成長を支えた事例

お話を伺った方:マネーフォワードビジネスカンパニー SMB事業推進 本部 新規事業開発部 部長 人事パートナー  服部穂住様

会社名:株式会社マネーフォワード

従業員数:2,148名(23/11末)

  • 導入範囲:全社導入
  • 導入対象人数:2,148名(23/11末)
  • 導入時期:2019年~
導入前の課題
  • 2017年当時、人数が急拡大して相互理解が追い付かない状態になっていた(社員数が毎年1.5倍に拡大)
  • 上場前後で多様な人が混在する組織となり、コミュニケーションギャップが生じがちだった
  • 離職率が拡大していた
主な取り組み
  • 経営層向けの雪山ワークショップ実施
  • 興味のある部門からFFS受検・フィードバック実施(最終的には全員実施)
  • チーム編成や新入社員配属等の参考情報として活用
導入効果
  • 「強みを生かして弱みを補う」ことが当たり前の認識になった
  • 相互理解が進み、多様な人同士の建設的なコミュニケーションがとれるようになった
  • PMIの時にスムーズに進んだ
  • 離職率が適正に戻った

【導入の経緯】組織が急拡大する中、人間関係の問題が起きていた

―どのような経緯で、FFSを導入することになったのでしょうか?

服部さん:最初にFFSを検討したのは2017年でした。毎年社員数が1.5倍ずつ増えていて、組織づくりを考えないといけない時期に差し掛かっていたのです。2017年9月に上場したのですが、その影響も起こっていました。3つにわけると、(1)創業期からの人、(2)急成長するスタートアップに関心を持って入った人、(3)上場した安定企業に惹かれて入った人。とステージ毎に入社された人がいて、多様な価値観のもとで人間関係の問題等が起きはじめる予兆がありました。

―成長痛と呼ばれるようなものでしょうか。

服部さん:社員数が急拡大していくと、全体での自己紹介のような時間はとれなくなります。新しく入った人にとっては職場にどういう人がいるのかを把握しきれないまま、業務がスタートします。結果として、相互理解が進まないまま、人がどんどん増えていくことになります。その状況を見ながら、人の相性問題を解決できる方法はないかと考えるようになりました。

相性の要因がわかれば、ある程度問題を予測して対応できるようになるだろうと思ったのです。FFSの場合は三者間の分析もできるし、科学的な根拠もあることで、興味を持ちました。

―組織変化が大きい時期ですので、離職問題もあったのではないでしょうか

服部さん:まさにそうでした。 離職率が上場後に少し上がったのですが、その後元の状態に戻りました。そこに貢献したのがFFSだと思っています。もちろん多様な要因が影響していますが、相互理解をする文化が醸成されたことの効果が大きいと見ています。

―そもそもFFSはどういう経緯で知ったのですか?

服部さん:人事担当者が集まる勉強会に行った時に、たまたまLINEの方がFFSを導入しているというのを耳にしたのです。そこで興味を持って問い合わせました。ただ、実際に導入したのは2019年で、問い合わせてから空白の1年があるんです。自分がかなりの業務を抱えていた時期で、「導入するならきちんと理論を理解して運用を進める人が必要だ」と考えたからでして……。そこでこの間に、組織開発を進める担当者の採用を進めました。

―最初から運用まで考えていたのですね

服部さん:もちろんFFSの専任ではないのですが、組織開発を中心に動いてもらう担当を1人置きました。別途、従業員サーベイも行っているのですが、運用として「点数の低いところはがんばれ」となりがちでした。それをFFSと組み合わせると、従業員サーベイ結果の説明がつき、打ち手がとりやすくなるのではないかと思ったのです。今はメンバー構成を因子で見ることで、組織成果が高まらない要因を探ることができるようになっています。

【導入時の工夫】経営層にワークショップを体験してもらうところから始める

―導入時に何か工夫されたことはありますか?

服部さん:なぜFFSがよいのか、どんな効果があるのかという問いがついてまわると思ったので、やはり経営層を巻き込まないといけないと考えました。それで最初におこなったのは、経営層を対象にしたワークショップです。雪山で遭難した時にどう行動するかを討議して、個性の違いを体感するというワークですが、それがかなり功を奏しました。個性の違いがどう影響するかを肌で感じ、その場で「いつから社員向けに始めるのか」という問いが出たくらいです。

―メンバーの皆さんはどう反応したのでしょう

服部さん:かなりの好反応だと思います。FFSを受検したうえで、フィードバックをするワークショップを開催したのですが、アンケートでの「満足度」が90%、「活用したい」が80%といった状況です。受けたい部門から手を挙げてもらって、今はもう100%が受検しています。「強みを生かして弱みを補う」ことが、会社の文化として当たり前になってきたのがよかったと思っています。

―相互に見られる仕組みにしたのですか?

服部さん:いえ。オフィシャルな仕組みはつくっていません。ただ、社員が情報交換するチャットに、「私こういう個性でした」と皆さんが発信しだしたんです。自己紹介する時に、因子名を記載し始めた人もいました。人事が何か言ったわけではなくて、自然発生的でしたね。それがすごくよかったと思っています。部署によっては相互共有しているところもあるようですが、その辺は現場にゆだねています。

―FFSの資格を持つ方が社内にいらっしゃるのでしょうか?

服部さん:最初は人事の担当者や私がやっていましたが、今は各事業部に資格取得者がいます。私自身も今は事業部側の立場になっていまして……事業部側に資格者がいると、気軽に聞きやすいようですね。たとえばチーム変更をする際に「相性を見てもらっていいですか?」「この組み合わせで迷っているんですけれど」といった相談を受けたり、個別に「この人とうまくいかないんですけれども、FFS的になぜですか?」と質問が来たりすることがあります。

【浸透に向けた工夫】社内事例をつくってPRしていく

―最初からスムーズに皆さんが活用し始めたのでしょうか?

服部さん:経営層のワークショップをやったあと、「やりたい部署から手を挙げてください」という方式で進めました。こういうことに興味があり、新しいものにはとびつくという人も一定数いますので、最初はそういう人がいる部署が反応してきて、実施しました。ただ初期に実施した部署は限られていましたので、他の部署に向けて社内PR活動をしました。

―どういうことをやったのでしょう?

服部さん:全社員が参加する朝会で説明しただけなのですが、そこでこれまでの実績をかなりPRしました。特に、ベトナム拠点でやった事例はわかりやすい実績だったので、かなり興味を持って聞いてもらいました。「何でうちの部署でもやらないのか」というモードに、全体がなっていったと思います。

―ベトナムでの実施はいい手ごたえだったわけですね

服部さん:ベトナム拠点でも相性が課題になっていたそうで、非常に皆さんの納得感が高かったです。私としても、FFSは個性であり、国だとか、物理的な制約のような違いを超えるということを再認識しました。「国が違うから」なのではなく、「個性が違うから」と思えば歩み寄りかたがわかるということをお互いに腹落ちして、すごく感謝もされました。

―会社統合後のPMIも活用されたようですが

服部さん:それもすごく効果がありました。当社より規模の小さな会社にグループジョインいただくケースが多かったのですが、そうすると相手の会社側の方々は不安ですよね。まず自社経営層の個性を見せて「こういうメンバーです」と紹介し、相手の会社にも受検してもらっていくことで、お互いの理解を深めていきました。統合後の共通言語としても使えるのが利点です。

―現在の活用状況は、当初の想定と比べてどうでしょうか

服部さん:みんながFFSをベースにコミュニケーションしたり、ポジティブに活用したりする状況になってよかったなと思っています。また使い方として「予防人事」、すなわち先に手を打てる状態にしていきたいと考えていたのですが、これも全員のデータがそろっているのである程度できるようになっています。ただ、事業部ごとの推進を中心にしてきたので、活用度合いに差が出ている点は、今後の課題かもしれません。

―活用促進に向けて意識していたことはありますか?

服部さん:自分の中で大事にしていたのは、「不安にさせずにファンを増やす」「みんなにどうFFSを好きになってもらうか」ということです。だから評価には使わない、配属も参考にするけれどもそれだけでは決めないというのは徹底して伝えました。また、自分の結果に納得がいかないという人もいますが、その人にはかなり対話する時間をとって理解を掘り下げてもらいました。

好きになってもらうには実感してもらうのが一番ですので、飲み会で個性別の違いをおもしろおかしく語って、「こう使えるというおもしろさを他の部署にも伝えてくださいよ!」という働きかけをしたこともあります。

―日常の中で理解が進むと、活用も進みますよね

服部さん:たとえばチャットでのやり取りも、結構個性が影響します。お礼の返信で「ありがとう。」か「ありがとう!」ではニュアンスが少し違います。どちらでも気にしない人と、語尾の「。」を変に気にしてしまう人とがいるのですが、因子の違いで受け止めの差が起きるとわかっているかどうかで、変な行き違いを避けられると思っています。

【今後の展開】FFSの日常づかいが、チームワークとリスペクトを強化する

―ふだんのFFSの活用場面を教えてください

服部さん:受検してもらったら基礎講座という形で、自己理解、他者理解の仕方を理解してもらうようにしてきました。加えて「チーム編成の相談に乗ってください」や、「チームで合宿をやるのでその時に雪山ワークショップをやりたい」といった形で、部門ごとのリクエストをサポートするようにしていました。新入社員は入社後に受検してもらい、翌月くらいに基礎講座を受検してもらっています。配属の参考にしたり、トレーナーとの相性を見たりもしています。

―御社のカルチャー面とFFSとの関係はいかがでしょう?

服部さん:当社ではカルチャーをすごく大事にしていて、そこに「チームワーク」と「リスペクト」をうたっています。代表の辻もよく、1人ではなくチームで成果を出そう、自分にないものを持っている人をリスペクトしようと言っているのですが、その辺はかなりFFSと相性がいいと思っています。

―今後はどのような展開をお考えでしょうか

服部さん:FFSの浸透は、経営理念と似ているのではないかと思っています。飾っておいても仕方がなくて、日常で使えるとか、かっこいいものだと思えれば浸透する。日常づかいをするために、たとえば全然別の研修の時にも、「今日のチームはこういう組み合わせでしたよね」「何々さんから見たらこうでしたよね」といったように、本当に日常の中で使っています。これが大事だと思っていますし、今後も働きかけを続けていきたいと思っています。

―FFSの活用を考えている会社があるとしたら、どうアドバイスされますか?

服部さん:やってみて思うのは、導入するなら早いうちがよいということ。人数が拡大すると導入の難易度もあがりますし、多様な人が増える分、求められる説明の難易度もあがります。また、経営層の理解があることは結構重要ですね。それが現場での浸透にも影響すると思います。

そして何につけても、みんなに好きになってもらえるかが一番大事だと私は思っています。データをとって終わりではなく、みんなが活用できる状態をつくっていく。私たちもまだまだ取り組み続けていきますし、ここがどの会社でも大事だと思っています。

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