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FFS活用を再加速し、急拡大する組織のベースをつくる ~先行部門でチームビルディングを進め、関係性の質向上

FFS活用を再加速し、急拡大する組織のベースをつくる ~先行部門でチームビルディングを進め、関係性の質向上

お話を伺った方:松本 将司 様(コーポレート本部 本部長):右/弓場 淳代 様(ES本部人材企画部):左

会社名:さくらインターネット株式会社

業種:情報・通信

従業員数:997人(2025年3月時、連結従業員数)

  • 導入範囲:全社導入
  • 導入時期:2020年~
背景/目的
  • 相互理解・関係性づくりの手段として導入・活用していたが、組織規模が急拡大する中で施策の優先度も変化し、FFS活用のスピードが下がってきていた
  • 一方で組織規模の急拡大により、お互いに「よく知らない」状態が起こりつつあった
  • フルリモートの働き方で最大のパフォーマンスを出していくためには、関係性の希薄化がリスクになり得るという認識が高まった
  • 相互理解・関係性づくりの強化に向けて、FFS理論の活用を加速していく方向へ
主な取り組み
  • 営業部内の6チームに向けて、チームビルディングワークショップを実施
  • その手前で、自己理解ワークショップ、リーダー向けチーム理解ワークショップも実施
  • 現在、他の事業部に向けても同様の取り組みを推進中
効果
  • お互いをよりよく知り、チームで同じ方向を見やすくなった
  • 組織変更後も、関係性構築から入ろうという動きが見られる
  • バリューの実践に大きく影響

【課題意識】
組織が急拡大し、お互いを「よく知らない」組織になりつつあった

―最初にご担当業務について、簡単に伺えますか?

松本さん 私は現在、法務・ガバナンス・経理財務などを担うコーポレート本部全体を担当しています。加えて、このコーポレート本部内でのFFS活用も推進してきました。先日も新しく入ってきたメンバーに向けて自己理解セッションを実施したところです。自組織の運営においてFFSの有効性を強く実感してきたので、半ば自主的に全社推進についても関わり始めました。

弓場さん 私は6年ほど前に人事へ異動し、新卒採用や新卒教育を中心に担当してきました。FFSも新卒研修に組み込んで活用しています。また、ES(Employee Success)関連の業務も私の担当領域で、FFS活用の可能性について松本ともいろいろと議論してきました。

―FFS理論自体は、何年も前に導入されていますよね?

松本さん 導入したのは、2020年ごろだったと思います。導入を決めた人事責任者の方針で「全員に強制するのではなく、よいと思った人が活用する」ようにして、その方針は今も変わっていません。

―お2人とも割と早くに資格をとられたとか

松本さん 初期は草の根的にじわじわと広がっていくような状態だったのですが、私自身もその一環でFFSを知りました。「これは絶対に役に立つ」と確信したので資格をとり、本部内の活用を始めたのです。人事部門以外で資格をとりにいったのは、私が最初でした。

―そうした初期の広がりがありつつ、今、改めて活用に力を入れ始めた背景を教えてください

松本さん 実は昨年だけでおよそ200人もの仲間が増えたのですが、これは全社員のおよそ2割にあたります。つまり、「お互い、よく知らない」という状況があちこちに生まれているのが昨今です。このままではどこかで組織内の機能不全が起きるんじゃないか――そんな危機感が強まり、「それならば、相互理解に役立つFFSの活用をさらに加速してみよう」と社内で話し合いました。

―活用は任意なので、既存社員でも皆がFFSを知っているわけではないですよね

松本さん 「このように使えますよ」という発信をしないとなかなか広がっていかないのが、任意活用の特性だと思います。しかし、直近の数年間は、そうした発信を一時的に抑えていました。優先度の高い業務に押され気味だったというのが実状です。そういう時期が続いていたので、社内での広がりも限定的でした。

弓場さん 新卒研修では使っていたのですが、キャリア採用者や既存メンバーに向けた働きかけは、積極的には行っていませんでした。しかし先ほどのように組織が変容していく中で、FFS活用の加速が有効なのではないかと松本とも会話し、今回のrelateさんとの取り組みに至った次第です。

【取り組み】
先行部門でワークショップを行い、相互理解とチームビルディングを促進

―改めてFFS活用を加速していくうえで、relateという外部にお声がけされたのはどういう理由ですか?

弓場さん FFSの有効性をPRするだけでは十分ではなく、その後のフォローがないと活用し広げることが難しいです。そこは社外の力も借りて、浸透に向けた取り組みをしていきたいと考えました。

松本さん 部門単位でワークショップをやって理解・定着を図れないかと考えました。そうしたワークショップであれば、社外の専門家に切り出してお願いしやすいと思ったのです。ただ実際始めてみると、「ここだけお願いします」ということではなく、一緒に全体を考える仲間が増えたという感覚ですね。仲間が増えたことが、加速を後押ししています。

―うれしいお言葉です!具体的にどういった点でそう思われたのでしょう?

松本さん 目指したい状態を理解してもらって、そのために何をしていくかを一緒に考えてもらえた点でしょうか。そうした議論から、FFSを「知る」「わかる」「できる」というステップの設計ができ、第一弾として営業部でのワークショップを作り上げられたと思っています。

弓場さん ワークショップ実施後に組織変更があったのですが、関係性を期初にうまくつくろうという動きが出てきています。こういう変化を見ると、実施した意味があったと感じますね。

松本さん 「この因子同士の場合、こんな作用が起きるのではないか――」といった会話を社内だけではなくrelateの皆さんとも密にできるようになって、やれることの幅が広がった気もします。

―営業部のケースは、段階的にワークショップを体験してもらうような設計でしたね

松本さん FFSの理解自体にばらつきがありましたので、まずは自己理解ワークショップをオンラインで行いました。また、今後はチーム編成にも使えたらと思っていたので、リーダー層に対しては、各々のチームの関係性を解説するようなセッションも別途実施し、そのうえで、チームビルディングのワークショップを行ったという流れです。

―チームビルディング自体の流れはいかがでしたか?

弓場さん 実施はチームごとに、6回にわけて対面型で行いました。relateさんに進行してもらいましたが、最初にアイスブレイクで場をほぐしてもらったので、相互理解ワークはかなり盛り上がったと思います。次に、各チームの方向性をリーダーから話してもらい、各自なりの貢献の仕方を考え、共有するという流れで進めてもらいました。もっとじっくり考えたいという声もありましたが、短期間で全チームへの実施が一巡できたのは、1つの成果だったと思います。

―参加者の反応はいかがでしたか?

弓場さん インタラクティブなワークショップだったこともあって、比較的すんなりと受け入れてもらった印象です。因子を理解して「なるほど、だからこうだったのか」と納得している様子も結構見受けられました。1か月後アンケートではコミュニケーションに活用しているという声も複数見られました。もちろん、まだ使いこなせていない様子の方も見られますので、フォローや情報発信を行っていく予定です。

―社内全体を見渡して、どういう人、あるいはチームがFFSを積極的に活用しようとされていますか?

松本さん 部下のマネジメントに真剣に取り組もうとしている人ほど、FFSへの反応が高いですね。FFSという新しい“武器”を得られたと思うマネジャーもいると思います。

弓場さん 組織変更が多い組織ではありますので、今後はチーム編成などにも使えたらと思っています。

【効果を感じる場面】
関係性づくりに役立つFFSは、バリューの実践にもプラス影響

―相互理解が深まり、関係性がよりよくなっていくことが、どんな効果につながっていくとお考えですか?

松本さん もともと我々は「肯定ファースト」「リード&フォロー」「伝わるまで話そう」というバリューを設けていて、コミュニケーションをとても大事にしてきました。今回FFSワークショップをやったときの様子を見ていると、こうしたバリューの実践によい効果があると感じます。

弓場さん 私はキャリア相談の窓口も行っているのですが、関係性の悩みも結構寄せられます。そうしたときにFFSのデータが手元にあると、事象を具体的に解説できるので、相談者の納得度が高いですね。同じ「不安」という状態も、個性によってサポートの仕方が変わるはずです。今後キャリア支援においてもうまく活用していけたらと思っています。

―フルリモートの働き方は、関係性づくりの面で何か影響していますか?

松本さん 業務上は特段問題ありませんが、オンライン上での会話は仕事の話だけになりがちです。コロナ禍をきっかけにフルリモートにしたのですが、もともと関係性を築けていた人はフルリモートになってもその関係性が維持されています。一方で、最近入社した人にとっては関係性を高める機会はなかなか持てません。今回の対面ワークショップでは、参加者同士でお互いの新たな側面を発見している感じはありました。

―関係性の向上がプラスに働いた事例などございますか?

松本さん 今回のワークショップとは別の話ですが、因子を理解して、徹底的に行動に活かした方がいます。その方は凝縮性と弁別性が高いので、「こうあるべきだ」「白黒はっきりせよ」ということを人にも求めがちでした。ただ、違う個性の部下にとっては結構大変です。本人もうまく対話できていない自覚はあったようで、FFSを知って「だからか!」と腑に落ちたようです。

―個性因子を理解することで、自己と他者のギャップが理解できたわけですね!

松本さん 自分の中で「悪い弁別は出ないようにする」とガイドラインを設けたり、面談の最初の5分は必ず雑談するという自己ルールをつくったりして、最終的にはものすごくよい関係性に変化しました。部下からの信頼も厚く、私自身もいろいろな気づきを得ました。

【今後の展望】
マネジャーにとってのよい“武器”を増やし、事業成長と連動した組織成長が進むようにしていく

―FFS活用のこれからは、どのようにお考えですか?

松本さん 挙手制での運用は変えないものの、やはり一定割合以上の人に浸透して、社内で知られている状態にしたいと思っています。人との関係性に困っている人は多いはずで、FFSによってそれを解消できる点は多いと思いますので。

弓場さん 今また別の事業部で、同様のワークショップを開始しています。こうした先行事例が広まり、「うちもやりたい」という声がどんどんあがってくる状態にしていけたらよいですね。

―今後の事業成長、組織成長の面では、どのように見ていらっしゃいますか?

松本さん 創業以来、主たる事業体が少しずつシフトしてきたのが当社の特徴だと思います。創業時の主事業であったレンタルサーバーサービスは徐々に割合が下がり、ここ10年ほどはクラウドを主事業として伸びてきました。さらにここへきて、生成AIを中心とした事業変化が起きています。事業形態の進化に合わせて、組織形態をアップデートしていけるかどうかは我々にとっては非常に重要なテーマです。

―チームビルディングはその一助になりそうですね

松本さん 相互の関係性、そしてチーム内の関係性がよくなっていくことは、組織がきちんと機能するために欠かせないと思います。新しい人がどんどん入ってくる組織でもありますので、チームをうまく扱える状態にしていきたいと思います。

―これからの取り組みに向けてメッセージをお願いします!

弓場さん バリューを体現していくうえで、FFSは有効な手段だと思っています。より多くの人が自己理解を深め、よりよい関係性づくりを進められる組織にしていくために、できることを1つずつやっていきたいと思います。

松本さん いろいろな背景の人がいて、事業領域自体もどんどん変化し社内人材の多様性が広がっていく中で、皆が「自身と周囲との適切な関係性」をオリジナリティーをもってつくっていける組織が今求められていると感じます。とはいえ、マネジャーからすると、「具体的にどうすればよいのか」と思うことでしょう。FFSは互いの関係性を意識し理解し合える点に大きな魅力があり、それをマネジャーがよい“武器”として使えるようにしていって、各現場がより活き活きと関係性を築いていくようになっていけばと思っています。

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