1on1だけじゃない! “相互理解”を促す対話の新しいかたち

こんにちは、relate株式会社ファウンダーの吾妻聡平です。
前回の記事では、1on1ミーティング(以下、1on1)がなぜ注目されるようになったのか、そして相互理解の重要性に比べて「形としての1on1」に過度にこだわりすぎることのリスクをお話ししました。
実は私自身、1on1を推進している企業を支援する中で、「1on1じゃなくても良いんじゃないか?」と思う場面をたびたび見かけてきました。これは決して1on1を否定しているわけではなく、対話を深めるためのアプローチが他にもあるという意味です。
本記事では、「上司と部下が1対1で向き合っていても本音を言いづらい」と感じるケースや、複数人・第三者を交えた対話のメリットなど、“1on1の次に試してみる”対話の形を考えてみましょう。
1.「1on1でうまくいかない」現場でよく聞く声
「毎回進捗確認で終わってしまう」
1on1を導入した企業でありがちなのが、「結局、上司から部下への進捗チェックだけして終わり」「雑談の延長で、特に深い話はしていない」という状態。特にスタートアップや成長企業だと、マネージャーが部下を8人以上抱えており、忙しすぎて時間が限られるため、どうしても表面的な内容に終始してしまうのです。
それでも「1on1は大事だ」と言われるから形だけ継続し、誰も満足していないのに“やってます”という状況が生まれてしまいます。
「上司と二人きりだと本音を言えない」
日本企業特有の村社会的な風土もあり、「1対1で厳しい話をすると気まずい」「評価権を持つ上司相手に本音なんて言えない」と感じる部下は少なくありません。
結果として、上司から「本音を言っていいんだよ」と言われても、部下は当たり障りのない範囲でうなずくしかない。上司はそれを“意見がない”と受け取って、さらに一方的に指導を続けてしまう。お互いの本音が言えず、溝はますます深まる――そういうパターンも多いのです。
2.なぜ“1対1”がかえって壁になるのか
フィードバックに対する“抵抗感”が大きい
1on1の目的としてよく挙げられるのが「フィードバックを通じた気づき・成長」ですが、日本人の多くは保全性の個性を持つと言われ、衝突を避けたり波風を立てないようにしたりする傾向があります。そのため、たとえ建設的なフィードバックだとしても、一対一で面と向かって言われると強い抵抗感を覚えやすい。
結果、「部下にはフィードバックをしなきゃ」と思う上司と、「そこまで突っ込まないでほしい」と思う部下の間でギャップが生まれ、“本気で言えない”状態に陥りがちなのです。
上司自身も「何をどう言えばいいか」がわからない
一方、上司側も「1on1をやれ」と言われたものの、具体的にどう進めればいいか学んでいないケースが多い。進捗を聞くのか、雑談するのか、目標設定をするのか――結局明確な指針がなく、「うまく回せている実感がない」と困惑することになります。
こうして上司も部下も“戸惑い”ながら、とりあえず時間を埋める形だけのミーティングを続ける……それが「1on1が難しい」「効果がない」と言われる大きな背景だと言えるでしょう。
3.第三者や小グループが生む、本音と気づき
一対一では言えない感情が、第三者の介入で出てくる
実際の企業の現場では、「上司と部下がモヤモヤを抱えていたけれど、第三者がファシリテートする場で初めて“あれが嫌だった”“実はこう思っていた”と打ち明けられた」という例が多々あります。
たとえば、上司は「なぜ自分の配慮が伝わらないのか」と悩み、部下は「上司が振り回しているようにしか見えない」とイライラしている状態。1対1では互いに言い出せなくても、第三者が「どう感じたの?」と促すだけで本音が出やすくなるのです。
小グループでの“気づき”共有
1on1よりも、上司・部下・第三のメンバーを加えた3~4名のグループのほうが、相互理解が進むケースもあります。なぜなら、一人が意見を言うと、他の人が「それ、実は私も思ってた」「同じように感じてた」と乗ってくることがあるから。
こうしたグループ対話では、「なんであのときそういう言動をしたのか」を主題に、互いに深堀りできるため、個人攻撃ではなく行動の背景に目を向けられます。これこそが本当の意味での“相互理解”に近づくやり方です。
4.1on1から卒業?“対話のデザイン”を再考しよう
1on1=最終形態ではない
「1on1は大事だ」と言われていると、“それをやっていない上司はダメ”というプレッシャーを感じる人もいるかもしれません。しかし、前述のとおり1対1という形が合わない場合も十分あるのです。
大事なのは「上司と部下が同じ情報や感情を共有し、本音を言い合うこと」であって、必ずしも1対1の定例ミーティングだけが正解ではありません。むしろ、1on1がうまくいっていないなら、思い切って“別の対話手法”に切り替えてみるのも一つの手です。
“対話のデザイン”を広げてみる
たとえば、
- 複数人での振り返りミーティング:お互いの“気になる言動”をリスト化して、背景や理由を確認し合う
- インタビュー形式:第三者が上司や部下にインタビューし、取扱説明書のように「この人はこういう時にストレスを抱える」を可視化
- ペアを変えながらの対話:上司と部下だけではなく、他部署の人とペアになって話す時間も設定する
など、いくらでも方法はあります。形にとらわれず、“相互理解”を引き出す仕掛けを柔軟に取り入れてみましょう。
5.まとめ:形に縛られず「相互理解の場」を作ることがゴール
- 1on1がうまく機能しない現場は、「上司と部下の2人だけ」という構造に問題があるケースが多い
- 実は、第三者や小グループの方が本音を引き出しやすいことも多々ある
- 大事なのは「行動の背景」を共有し合い、相互理解を促すこと
- 1on1はあくまで一つの手段であり、自社やチームの状況に合った“対話の形”を探るほうが効果的
1on1自体に大きな意義があるのは確かですが、それが唯一の解決策とは限りません。対話のゴールは“お互いが納得感をもって動けるようになる”こと。もし1対1の形式がかえって心理的負担になっているなら、思い切って別のアプローチを考えてみてはいかがでしょうか。
たとえば、「上司・部下+第三者」や「数名のチーム」で対話を設計すると、一対一では言えなかった本音や、実は相手も知らなかった“自分の強み・弱み”が明らかになるかもしれません。最終的な目的は相互理解による組織力アップ。どうすれば本音が言いやすくなるか、自由に試行錯誤してみることをおすすめします。
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「1on1がなかなか機能しない」「どうすればメンバー同士の本音を聞き出せる場をつくれる?」とお悩みの方は、ぜひrelate株式会社までご相談ください。組織の個性や風土に合わせた“対話のデザイン”について、具体的なアイデアを一緒に考えさせていただきます。
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