異質な個性こそ宝――“あるがまま”に生かす組織が変革を起こす

こんにちは、relate株式会社ファウンダーの吾妻聡平です。
前回は「個を生かす」ことの大切さや、なぜ個性データが必要かという視点をお伝えしました。本記事では一歩進んで、「社内に一見“問題児”に見える人材や、周囲と衝突しがちな個性をどう扱うか」という具体的なテーマに焦点を当てます。多様性を尊重しようと言いつつ、実際には「変わり者」「扱いづらい人」とレッテルを貼って排除してしまう――これはあまりにももったいないこと。なぜなら、その“異質”の中には組織変革やイノベーションを引き起こす力が眠っているからです。
今回は、凝縮性・受容性・弁別性・拡散性・保全性など、さまざまな個性が組織内でどのように衝突や誤解を生み、どうやって「あるがままの強み」に変えていけるのかを、実例や考察を交えてお話しします。
1. 異質な個性が敬遠されるのは“バイアス”が原因
どんな職場でも、まわりと合わずに浮いてしまう人はいるものです。しかし、その浮き方が「本人の本質なのか、単なるストレス反応なのか」を見極めることが大切です。たとえば以下のようなケースがあります。
- 保全性が高い人
変化を嫌がっているように見えて、実は「変え方がイメージできないだけ」かもしれない。道筋さえ示してあげれば、むしろ綿密な改善を得意とする頼もしい存在になる可能性がある。 - 凝縮性が高い人
一見「押し付けがましい」「パワハラ気質」と映っても、責任感ゆえに自分が前に出てしまっている可能性が大きい。周囲がその凝縮の強みを理解し、それに合ったアサインをすれば、組織変革の推進力となる。
組織にいるほとんどの人は「本人の個性がネガティブに出ている(=ストレス下で本来の力を発揮できていない)」状態と、「個性がポジティブに出ている(=組織のプラスに活かされている)」状態を行き来しています。前者だけを見て「この人は合わない」と判断してしまうのは早計でしょう。
2. “あるがままを生かす”と“わがまま放題”は違う
「個性を生かす」という言葉が、しばしば「本人の言うとおりにさせる」「相手に全部合わせる」という誤解を生むことがあります。これはいわゆる「心理的安全性の履き違え」にも似た問題です。
(1) 忖度や過剰な遠慮は逆効果
相手の反応がネガティブに見えるからといって、何も言わずに配慮しすぎるのはただの忖度にすぎません。本当にその人を生かしたいなら、「なぜそう感じるか」を解きほぐし、ストレスの原因を正しく把握しつつも、必要なチャレンジを与えることが大切です。
(2) とことん議論するからこそ得られる“シナジー”
日本では、相手の立場を考えるあまり議論を避けてしまう風潮が根強いですが、互いを理解するとはイコール「忖度」ではありません。相手の個性をわかったうえで、本音でぶつかり合うことこそ、新しいアイデアやイノベーションを生む源泉なのです。
3. 事例:ネガティブに見えた個性が大活躍したケース
当社が支援している企業でも、「変わった行動をする」「周囲から厄介者扱いされる」社員が大きく成長し、組織にとって欠かせない存在になった例があります。下記は一部の実例です。
(1) 大胆すぎるリーダーが「会社を背負う推進役」に
ある企業のミドルマネジャーは、凝縮性が非常に高く、部下からは「押しつけがましい」「厳しすぎる」とパワハラ寸前のレッテルを貼られていました。しかし実際は、「責任感が人一倍強い」「どんなにプレッシャーがかかっても立ち止まらない」という大きな強みを持っていたのです。
そこで「部下の細やかな不安には、受容性が高いメンバーのフォローを活かす」という補完関係を整えた結果、組織全体をぐいぐい引っ張る推進役になり、大きく成果を出せるようになりました。
(2) マネジメントが苦手な“天才肌”をプロジェクトの企画設計へシフト
別の企業では、拡散と保全の情動因子が突出していて、しかしマネジメントが苦手という社員がいました。上司は「いずれ組織長を任せたい」と考えていましたが、FFS理論の観点で見ると、管理職よりも“アイデアを形にするクリエイティブ領域”のほうが才能を発揮できるタイプ。
そこで、あえてマネジメントラインではなく新規コンテンツ企画に配置転換したところ、本人のモチベーションも一気に高まり、組織に革新的な学習プログラムをもたらすなど大活躍。周囲も「彼(彼女)にしか生み出せない」と評価するようになりました。
4. 異質を生かすための実践ステップ
(1) “嫌な言動”を感じたら、まず個性ギャップを疑う
「なぜ自分はこの行動が気に食わないのか?」を考えると、多くの場合、自分の個性との違いが反発を生んでいることが見えてきます。保全性の人が拡散性の動きを「計画性が無い」と否定したり、凝縮性の人が受容性の人の言動を「信念がない」と否定したり――まずは「お互いに個性が違う」という事実を受け入れましょう。
(2) その個性がネガティブに出ているのか、ポジティブに出ているのかを見極める
「ストレス反応でネガティブに出ているだけなら、関わり方や仕事のアサインを少し変えるだけで強みに転じる」ケースは意外と多いものです。改善策としては、以下が挙げられます。
- 道筋を示したり、ゴールを明確化したりして、不安や迷いを取り除く(保全性)
- ゴールだけ握って、実現方法はなるべく本人に任せる(拡散性)
- メンバーの意見を取り纏める調整役を担ってもらう(受容性)
(3) 配置転換や昇格時には「補完関係」を意識する
組織でよくあるのが、「変革を担える人材が欲しいのに、既存事業に強いタイプばかり昇進させる」というズレです。逆もしかりです。会社としてどの方向に舵を切るのかを踏まえ、必要な個性を適材適所で登用していく。異質な個性でも、目的に合うなら積極的に評価・配置するのがポイントです。
5. まとめ:「異質の宝庫」を生かせる組織が変革を起こす
- “あるがまま生かす”は「言いなりになる」ことではなく、個性を正しく理解しながらポジティブに導くこと
- ネガティブに見える言動の背景には「個性ギャップ」と「ストレス反応」がある
- 目的とする変革(イノベーション・新規事業・次世代リーダー選抜など)に応じて、異質な個性を敢えて登用し、周囲が補完関係を築けば大きく飛躍する可能性が高い
日本の組織では、長らく「周りに合わせることが美徳」という空気が根強く、異質な個性が敬遠されがちでした。しかし、その異質こそが組織の“次の一手”を支えるかもしれません。単に協調性を優先して衝突を避けるのではなく、互いに深く理解し合った上で建設的に議論をする――その先に、新しい価値創造が待っています。
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「社内に“ちょっと扱いづらい人”がいて困っているが、もしかしたら大きな可能性を秘めているのかも…」「FFS理論を使って個性を可視化し、異質な人材の強みを生かしたい」という方は、ぜひrelate株式会社へご相談ください。
私たちは“個性×関係性”を軸とした組織変革のご支援を通じ、異質な個性をポジティブに転じて組織をもう一段成長させるお手伝いをいたします。
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