マネジメント

マネジメントが“苦しい”あなたへ。日本のキャリアパスが抱える「管理職一本道」の罠

マネジメントが“苦しい”あなたへ。日本のキャリアパスが抱える「管理職一本道」の罠

こんにちは、relate株式会社ファウンダーの吾妻聡平です。

「管理職にならないと、この会社では評価されない」
「本当は現場で専門性を磨きたいのに、マネジメントをするしかキャリアパスがない」

多くの企業で、社員はこのような“見えない圧力”にさらされています。会社で生き残り、成長するためには管理職を目指すのが当たり前。その結果、本心では望んでいないにもかかわらず、「自分はマネジメントが好きでなければならないし、得意である必要があったから、そう自分に思い込ませていた」という悲痛な告白が生まれるのです。

今回の記事では、この「管理職一本道」とも言える日本のキャリアパスがもたらす問題に焦点を当てます。そして、FFS理論の観点から、自分自身の個性を深く理解する「セルフマネジメント」の重要性と、誰もが自分らしく輝けるキャリアを築くためのヒントを探っていきます。

1.その「マネジメントが好き」は、思い込みかもしれない

会社員として順調にキャリアを重ねてきた人が、独立・起業した途端にこう語ることがあります。「会社員の頃はマネジメントが好きだと思っていた。でも、いざ人を管理しなくなったら、こんなに自分のストレスがなくなるのかと驚いています」。

これは非常に示唆に富んだ言葉です。彼らは、会社という組織の中で評価され、生き残るために「マネジメントが得意である」と自分自身に言い聞かせていたのかもしれません。好き・嫌いや、得意・不得意という本質的な自己理解よりも、組織の求める役割に適応することを優先した結果、自分の本心と行動の間に「認知的不協和」を抱え込み、無意識にストレスを溜めていたのです。

もしあなたがマネジメントに「息苦しさ」や「終わらない苦労」を感じているなら、それはあなたの能力不足のせいではありません。そもそもあなたの“個性”がマネジメントという役割にフィットしていないだけ、という可能性を真剣に考えてみる価値はあります。

2.なぜ日本の「スペシャリストコース」は機能しないのか

「マネジメントが苦手なら、専門職としてのキャリアを歩めばいい」と考えるかもしれません。実際に多くの企業が「スペシャリストコース」のような制度を設けています。しかし、その実態はどうでしょうか。

残念ながら、日本の多くの企業において、このスペシャリストコースは「あってないようなもの」であり、十分に機能しているとは言えません。結局はマネージャーのほうが給与や役職で優遇される文化が根強く、専門職は「管理職になれなかった人」というようなイメージがつきまといます。

これは、海外の先進企業とは対照的です。彼らにとっては、一人の突出したエンジニアに役員並みの報酬を支払うことも当たり前です。マネジメントも数ある専門スキルの一つに過ぎず、誰もが目指すべき唯一無二のゴールではない、という思想が根付いています。

この「管理職になれないと負け」という日本の組織に根付く固定観念が、多くの個性のミスマッチと不幸なキャリアを生み出しているのです。これは、過去の記事で指摘した「タレントマネジメントの死角」であり、優秀なプレイヤーを管理職にして潰してしまう典型的な「機会のミスマッチ」でもあります。

3.まず知るべきは部下の個性より“自分の個性”

マネジメントの基本が「部下の個性を理解すること」にあるのは事実です。しかし、その大前提として、マネージャー自身が「自分の個性」を深く、客観的に理解しているかどうかが問われます。自分というフィルターを通してしか、私たちは他者を見ることはできないからです。

FFS理論で自分自身の個性を客観的に把握することで、以下のような自己理解が可能になります。

  • 自分はどのようなマネジメントスタイルを取りがちなのか。
  • 自分のやり方が、どんなタイプの部下にストレスを与えてしまう可能性があるのか。
  • 自分の「らしさ」や「強み」は何か。そして、暴走しがちな「弱み」は何か。

例えば、私自身は凝縮性が強いので、不誠実なことや非合理なことが起きると、瞬間的にスイッチが入り、強い口調で話を打ち切ってしまうことがあります。これは私の強みである推進力の副作用です。

この自分の個性の“クセ”を自覚し、暴走しそうになったときに意識的に踏みとどまる。この内省こそが、多様な部下を率いるリーダーに不可欠な資質なのです。自分の個性を深く知り、それを上手く使いこなすこと。これは、インタビューで触れた「洗練度」を高めるプロセスそのものです。

4.誰も教えてくれない必須スキル、「セルフマネジメント」

私たちは、マネジメントスキルと同様に「セルフマネジメント」のスキルも、誰も教えてくれないまま社会に出ている、という事実に気づくべきです。

セルフマネジメントとは、単なる時間管理術ではありません。自分自身の思考や感情を客観的に理解し、自分を最も活かせる状態にコントロールするスキルです。「自分は今、何にイライラしているのか?」「なぜ、この人の言動に“嫌な予感”がするのか?」「どうすれば、自分のパフォーマンスを最大化できるか?」こうした問いに答え、対処法を見出す方法論を、私たちは体系的に学んでいません。

このスキルが欠如していると、他者からのフィードバックを素直に受け入れられなかったり、無自覚に周囲へストレスを与えたりします。良い上司との出会いによって「内省を促してもらう」ことで感覚的にこのスキルを身につける人もいますが、本来は全てのビジネスパーソンがキャリアの初期に学ぶべき必須科目と言えるでしょう。

自己理解なきまま他者理解はあり得ません。マネジメントに悩む前に、まずは自分自身をマネジメントできているか、問い直す必要があるのです。

5.まとめ:自分を活かすキャリアを、会社と個人が共に作る

  • マネジメントが苦しいのは、能力ではなく「個性」と「役割」のミスマッチが原因かもしれない。
  • 日本の企業では管理職以外のキャリアパスが確立されておらず、多くの人が望まないマネジメント職に就かざるを得ない状況がある。
  • 他者をマネジメントする以前に、FFS理論などを通じて「自分の個性」と「自分の扱い方」を深く知ることが不可欠。
  • セルフマネジメントは、全てのビジネスパーソンが学ぶべき必須スキルである。

もしあなたが今の役割に息苦しさを感じているなら、それはあなたのせいではないかもしれません。企業は画一的なキャリアパスを見直し、「個を生かす経営」の名の下に多様な個性が輝ける道筋を作るべきです。

そして私たち個人も、「こうあるべきだ」という社会や会社の期待から一度自由になり、自分自身の個性に耳を傾けることから、本当の意味で充実したキャリアが始まるのではないでしょうか。

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「マネジメント適性に悩んでいる」「社員の多様なキャリアパスを設計し、エンゲージメントを高めたい」といった課題をお持ちの経営者・人事責任者の方は、ぜひrelate株式会社にご相談ください。個性を科学的に可視化し、一人ひとりが輝く組織作りとキャリア開発を支援します。

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