入社から「1年」で決まる新人の伸びしろ
前回は、「人にはそれぞれの個性がある」と常識として知っているにもかかわらず、それを自分の、あるいは組織の成長に役立てていない理由について考察しました。
この問題は、「個性」という概念が持つ重要性に対する理解の不足、それを組織運営や人事施策に落とし込む意識の低さに起因しています。
「自分を最大限に活かす」ことに関心を持とう
意識が低い最大の理由は「自分を活かす」ことへの関心の薄さです。
前回の繰り返しになりますが、「自分の強みは何かを考え、それを最大限に発揮して人生を送りたい」と考えるのではなく、誰かが押し付けてくる課題に対応すべく「勉強」する。それが、社会人としての努力だと考えている。
そんな意識の人が経営層にも人事にも数多くいます。だから、「自分の個性を理解して生かす」というプロセスを人事制度に組み込めないのです。
個性とその生かし方を経営に組み込む(組み込めない)、そのメリット(デメリット)がもっとも大きく表れるのは「新卒採用」や「中途入社者」のオンボーディング(初期育成や配置)のときです。
「個性」という変数を理解していない採用活動そのものが、企業にもたらす弊害も非常に大きいと思います。しかし、話が多岐にわたるので今回は「新卒採用そのものは無事終わった、望ましい人材が採れた」というところから始めましょう。
最初の配属先が「自分のトリセツ」の初期設定になる
これを読んで下さっている皆さんもおそらく頷かれると思いますが、会社に入った年のことは、多少の差はあれ記憶に残っているのではないでしょうか。新入社員の時期の経験、特に最初の配属先における先輩やチームは、その会社や仕事そのものへの印象を形作り、その後のキャリアに決定的な影響を与えます。
社会人にとって「新人の時にどの部署でどんな人につくか」は、人生の分岐点といっても過言ではないと思います。なぜか。
前回お話ししたとおり、「自分の個性と合った仕事」に出会い、疑問や悩みを理解してくれ、成長のロールモデルとなるような先輩に恵まれたら、誰でも仕事に対して全力で頑張ります。アクセル全開で仕事をして、充実感、成果を得た経験は、その後の人生で「仕事は自ら前向きに取り組むものだ(そうすれば楽しく人生を過ごし、成果も上げられる)」という自己認識につながります。
成功経験と、話が分かる先輩、さらにはその部署の上司に恵まれた場合は、その新人は「この成功は自分だけの力ではない。自分の個性と合った仕事、チームにいたからアクセルが踏めたのだ」という、メタ化した客観的な自己認識に導かれます。
それによって、新入社員は自分の「取扱説明書」を手に入れることができます。自分を上手に乗りこなす=機嫌良く働かせるにはどういうところに注意するべきなのか、他人と話すときはどう言えば伝わるのか、スランプに陥ったときはどうすれば立て直せるのか、といったことを学び始めるわけです。そして、気持ちに振り回されるのではなく、気持ちの原因を自ら突き止め、折れず、チームと組んで成長していく人材が生まれます。
「いい上司」で新人の人材価値が急拡大する
別の言い方をすれば、「自分の個性をうまく使える」機会を得られるかどうかで、その後の成長曲線が明確に変わるのです。その機会を得られなかった人に比べて圧倒的な差になり、生涯年収に大きく影響します。これは採用した会社の側から見ると、新入社員がたちまち一線級の人材に育つことになります。
新人は入ってきた時点では人的資本としての価値は「0」の状態です。ここに時間、給与、教育の投資を重ねていくわけですが、価値が「1倍か、10倍になるのか 100倍になるのか」を左右するのが、「最初に誰を上司(この場合はトレーナー)としてつけるのか」。もちろん部署によって個性との向き不向きはありますが、それも含めてトレーナー役がレクチャーすることは可能なので、どちらかに絞るなら「人」になるでしょう。
実際、私がお会いした多くのリーダーは、「新人の時の配属先で、いい上司にいい経験をさせていただいたことがその先の成長への足がかりになった」と異口同音に語ります。彼ら彼女らとの出会いの中で「自分の個性がこういうものなのだ、と気づいた」ことが、大きな支えになったというのです。
「いい上司」を見つけ出す具体的な方法
では、新人を育てるにはどのようなトレーナーが望ましいのでしょう。
FFS理論で診断した実績では、一人前になるまで(一般的には1年間)は、新人と同質の個性であるトレーナーを配置することで、圧倒的に教育効果を高めることができます。
https://human-logic.jp/about/ ヒューマンロジック研究所「FFS理論について」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00077/102300001/ 日経ビジネス電子版「Five Factors and Stress (FFS)」とは何か」
前回「私たちは、人の個性は
『その人がもっとも効率良く(=快適に、気分良く)動ける指示の出し方』
に等しい。そう考えています」と申し上げました。
つまり、「気分良く働ける」条件設定が新人と似ている人(同質)を、やはりFFS理論で診断してトレーナーとして付けるわけです。
物の感じ方、指示の受け止め方、理解の仕方などが似ている二人ですから、どう言えば話が伝わるか、誤解を避けられるか、やる気になるかがまさしく「自分ごとのように分かる」。これは得がたいメリットです。ほとんどのトレーナーは「教え方のプロではない」のですが、スキルトランスファーや企業文化の伝達がスムーズに進みます。
これが、まったく逆の個性の人がトレーナーに付いたとしたらどうでしょうか。「仕事は自分で探すもの、背中で学べ、俺もそうしてきた」というタイプ(これは別に昭和世代の特徴ではなく、「拡散性」が高い人にありがちな部下への対応です)の人が、手順を踏み、1から積み上げるように物事を把握したうえで実行に移したいタイプ(「保全性」が高い人)の新人の指導に当たったら、目も当てられません。トレーナーの「放置プレイ」に新人は「まともに仕事を教えてもらえない」と不信感を抱き、成長の機会を失い、早期離職のリスクが高まります。
採用にコストを掛け、オンボーディングは手抜き?
企業はどこも採用に多額のコストをかけているにもかかわらず、その後のオンボーディングに十分な戦略や予算を投じることが少ないと、歯がゆく思います。最初の配属先での失敗は、採用のコストを無駄にするだけでなく、優秀な人材のポテンシャルを未発揮のまま終わらせてしまいます。
個人にとっても組織にとっても、社員の個性を知ること、その組み合わせを考え抜くことから、成長は始まる。私たちはそう信じています。第一歩は、ご自身の個性を知るところから始めてみてはいかがでしょうか。
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