大企業こそ陥る「同質化」の落とし穴

FFS理論で後継者問題や組織停滞を打開する
「大企業ほど同質化に陥り、新規事業や後継者選びがうまくいかないリスクがある。FFS理論を活用し、異質補完の組織体制を作ってサクセッションプランを成功させるヒントを解説します。」
こんにちは、relate株式会社ファウンダーの吾妻聡平です。
前回の記事では「部下のことは自分が一番わかっている」という思い込みが、なぜ組織停滞を引き起こすのかを取り上げました。今回はもう一つの大きなテーマ、「大企業こそ陥る同質化」について掘り下げます。
歴史ある企業が変革を求められてもなかなか動けない、後継者問題がこじれて社内政治が横行する――こうした背景をFFS理論の視点から見直し、どのように改革へ導くかを考えてみましょう。
1.大企業がハマる同質化の実態
「安定運用」こそ最大のミッションになりがち
安定期に入った大企業では、今ある仕組みを着実に回すことが至上命題になりやすいものです。そうすると、リスクテイクや変化を好む人材より、既存のやり方を壊さずに維持できるタイプが重宝されます。
FFS理論で見ると、保全性が強い人が評価されやすく、昇進しやすい構造が作られがち。この状態が何年も続くと、気づかないうちに同じような個性の人材が上層部を占めることになり、新しい風や“異質”が排除される空気が生まれてしまうのです。
まるで村社会:結論ありきの会議と裏の根回し
同質化した大企業の特徴が、結論が最初から決まっている会議や、水面下での根回しによる人事・評価の決定です。チャレンジングな意見は「浮いている」「周囲との調整不足」と一蹴されがちで、イノベーションに必要な対立や議論が行われにくい。
こうした状態が続くと、若手の離職や事業のマンネリが進み、経営者が「なんとかしなければ」と慌てて外部のカリスマを招く――しかし、それだけでは根本を変えられずに終わる例が少なくありません。
2.「保全性」が悪者になるわけではない
安定経営や堅実な積み上げに不可欠
誤解のないように付け加えると、FFS理論で言う保全性の高い人材は決して悪いわけではありません。実際、堅実なリスク管理や着実な改善という強みは、大企業の中長期運営において欠かせない要素です。
問題なのは、その保全性人材ばかりが登用され、会社が“堅実一色”になってしまうこと。拡散性や弁別性、あるいは凝縮性など、異なる個性をうまく組み合わせる設計ができていないと、変化が迫られたときに動けなくなるのです。
組織が村化しているかどうかをチェックする
- 評価会議で、「新しいアイデアを出す人」を“厄介者”扱いしていないか
- 会議の場で「もっと練り直してから提案して」と言いがちな雰囲気になっていないか
- 中途採用や外部人材が「なんだか合わない」と言ってすぐ辞める現象が多くないか
もしこうした兆候があるなら、すでに同質化が進んでいるかもしれません。必要なのは、異質な個性を排除せず補完関係を作るための仕組み作りです。
3.FFS理論とサクセッションプラン:後継者を間違えないために
後継者の候補が全員「似たタイプ」になる理由
大企業には指名委員会や報酬委員会が設置され、後継者選びをより透明化しようという動きが広がっています。しかし、実際に上がってくる候補者が「どれも似たような人ばかり」という問題が依然残っているのが現状です。
これは、結局選抜する側が同質化しているから。自分たちと似たタイプの人材を「優秀」とみなし、「あの人は自分たちとは違う」と弾いてしまう構造があるのです。
異質な後継者をあえて選ぶ度量と仕組み
FFS理論の観点をサクセッションプランに取り入れると、「次のリーダーは保全性が強いのか、拡散や凝縮が必要なのか?」など、企業の中期ビジョンと個性のマッチングを客観的に考えられます。
もし本当にイノベーションを起こしたいなら、拡散や凝縮の要素を持つリーダーが有効かもしれない――ただし、保全型が多い現場に馴染むよう、マネジメント手法を変える工夫も必要。こうしたロジックが明確になれば、後継者選びが単なる“お気に入りの昇格”に留まらず、組織を根本的に変える手がかりとなります。
4.改革を成功させるポイント:組織が村化しない仕掛けを作る
(1)人材ポートフォリオを明確化し、“空白”を埋める
大企業が同質化を崩すには、まず「現在どんな因子の人材が多く、どの因子が不足しているか」を全社レベルで可視化すると効果的です。たとえば、保全・受容だらけの管理職陣を見て「拡散や弁別の人がいない」と理解できれば、昇進・採用でその空白を補う方針を立てやすくなります。
(2)評価や異動のプロセスを“多角的”にする
同質メンバーだけで評価会議や異動決定をすると、どうしても「自分たちの常識」に収まりがち。そこで、異なる個性(因子)を持った人が評価会議に参加するようにしたり、社外取締役など外部視点を積極的に取り入れたりして、バイアスを薄める工夫を仕組みに盛り込むのが望ましい形です。
(3)“異質を尊重する文化”を日常から浸透させる
最後に大切なのは、外圧やカリスマに頼らず、組織内部で異質を生かす空気を醸成することです。FFS理論をベースに「なぜあの人はこういう言動をするのか」を正しく理解し合う土台を作る。そうすれば、たとえ大企業でも少しずつ風土が変わり、新しい意見に耳を傾ける度量が育っていきます。
5.まとめ:同質化を打破し、多様性を活かす組織へ
- 大企業が新規事業や後継者選びに失敗しやすい原因の一つが“同質化”
- 内部の人材ポートフォリオを多様化しないと、外圧が来ても自ら改革しようとしないままマンネリに陥りやすい
- FFS理論を活用すれば「不足している個性」がどれなのかを客観的に分析でき、サクセッションプランでも“異質”の候補を正しく評価できる
いくつかの日本企業で見られるような、外部の強力なリーダーを呼んで短期的なV字回復を演出する方法は、あくまで対症療法にすぎません。真に組織を変えたければ、内部の人材ポートフォリオを再編し、異質な個性を積極的に取り込む土壌を作るしかないのです。
同質化の殻を破り、組織をもう一段成長させたいと考える大企業こそ、FFS理論による“個性×関係性”の設計を試してみませんか。後継者問題が停滞している企業でも、適切な異質補完が見つかれば大きな飛躍が期待できるはずです。
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