組織論

「能力」と「経験」と「個性」、どれが一番大事?

「能力」と「経験」と「個性」、どれが一番大事?

  「人にはそれぞれ個性がある」
 と言われれば、誰でも「いや知ってるよ」と思うでしょう。

個性は大事といいつつ、見ているのは能力や経験

 個性は大事だ、とみんなが言う。その一方で、ほとんどの人が、「仕事や勉強のアウトプット、ひいては年収に最も大きなインパクトを与えるのは、個性である」ということに気がついていません。

 あなたも「個性はもちろん大事だけど、自分の好き嫌いを抑えて努力することが勉強や仕事の本質じゃないの?」と、思っていないでしょうか。

 企業経営層や人事も同じです。経営戦略を実行する際に、社員の「個性」を知り、それを基盤にチーム編成や仕事のアサインをするべきであること、個性は社員の年収や会社の業績に、良くも悪くも強く影響する要素であること、と認識されている会社はほとんどありません。

 しかし、個性とは単なる好き嫌いなのでしょうか。
 好き嫌いだとして、それを「仕事だから」と押さえつけるのが本当に正しいのでしょうか。

 自分の実感ですが、我々は「個性」というものに対する理解が非常におざなりです。

 「十人十色」という常套句が見事に視覚化しているように、人がそれぞれ違っていることは、おそらく人類が集団生活を始めて以降、当たり前のこととして認識されていたはずです。とはいえ、十人十色が今なお「そうだよな」という実感を持って使われているのは、「ああ、この人は自分とは違うんだな」と驚いてしまう瞬間が、人生でかなり頻繁に訪れるからでしょう。

 言い換えれば、人はどう頑張っても、「他人も自分と同じ色だ」と思ってしまいがちだということです。自分がこう感じたのだから、相手もこう感じるだろう、自分がこう動くのだから、相手もそう動くだろう、ということです。

 個性と言っても小さな差異で、しょせん、人は似たようなもの。
 個性は変数かもしれないけれどその変化分はごく小さい。

 だから努力や経験のほうが大事だ。世間はそう考えがちで、はっきり「あ、この人は自分とは全然違う」と気付くと、個性という概念を知っていながらびっくりして「十人十色だなあ」とため息をつくわけです。

 個性があることは知りながら、他人も自分も同じだと考えてしまう――。
 では、多くの人たちは何を見て個人を判断しているのでしょうか。
 それは「スキル」と「経験」です。

スキルや経験で評価するから組織が伸びない

 個性ではなく、スキルや経験で人を見る。
 私たちrelateは、ここに「個人が能力を伸ばせない」「組織が成長できない」大きな原因があると考えています。

 能力(スキル)や経験よりなぜ個性が重要なのか、シンプルにお話しします。

 単純化するため、先に「個性」を定義しておきましょう。個性は「物事の受け止め方」「考え方」「好き嫌い」「クセ」と、さまざまな面で現れます。ですが、我々は研究者ではなく実務家ですので、「生産性」の面から個性を考えてみました。

 人の個性は
「その人がもっとも効率良く(=快適に、気分良く)動ける指示の出し方」「体験や学び方」 に等しい、というのが、私たちrelateの定義です。
 昔から言われている表現にするなら、“得手不得手”。これが、その人の実質的な個性なのです。

 人にはそれぞれが好む働き方や学び方、環境があり、それに合った仕事のやり方で最も能力を発揮する=生産性が上がる、ということです。

 環境には人間関係も含まれます。というより、オフィスワークの場合は環境で生産性に影響する大半が人間関係です。気の合う上司なら素直に指導も受け容れられます。成長も早くなる。逆ならば仕事そのものがイヤになったり、組織から出たいと思うようになったりするでしょう。

 つまるところ、自分のやりたいことをやりたい方法で、相性のいい人に囲まれていればやる気も出るし能力も伸び、自然と生産性は上がる。逆なら下がる。スキルの前に個性があり、個性に合ったやり方で仕事をすれば効率も上がり、いい経験を重ねる可能性も高くなる。ごく当たり前のことです。

 個性を無理やり押さえ込んで、苦手なやり方や人間関係でもなんとかやる気を出させよう、効率を上げよう、とするのが従来の組織論や、仕事術。そんな言い方もできるかもしれません。「そんなもの意思でどうにでもなる。仕事なんだから我が儘を言うな」という思い込みが、実は生産性を下げているのです。

合わない仕事を強いるのは組織にとってもムダ

 すこし寄り道をしますと、我々が個性の診断に使用している「FFS(Five Factors & Stress)理論(開発者:小林 惠智博士)」は、その人が何に対してストレスを感じるか、で個性を診断しています。ストレスにはいい面も悪い面もあり、その人が思う存分働ける、あるいはやる気を無くして動けなくなるストレスがどういうものかで分析するわけです。

https://human-logic.jp/about/ ヒューマンロジック研究所「FFS理論について」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00077/102300001/ 日経ビジネス電子版「Five Factors and Stress (FFS)」とは何か」

 個性に合った仕事と環境→やる気→生産性、という因果関係が当たり前すぎて、なんだか一般論を言っているようですが、「個性なんて気持ちの問題」という思い込みのおかげで、このロジックが世の中では通用しません。

 これがどんなにおかしなことか、たとえば、営業の仕事で考えてみます。

 単純化して言えば、人には新しいことをどんどん試すのが好きな人、既にあるモノ・コトを継続し、磨き込んでいくことが好きな人がいます。飛び込みで新規のお客さんを次々発掘するのは、前者が向いているでしょう。一方で、長年培ってきた顧客をがっちりつかまえ、ニーズを引き出すなら後者。逆にしても「意思の力」で人並みには成果を出せるかもしれませんが、これは個人としても、会社としてももったいない話です。向いた仕事をするほうが、本人にとっても幸せですし、会社にとっても生産性を上げられるはずです。

 こんな例はいくらでも出てきます。営業に絞っても、足繁く通ってニーズを聞き出すのがうまい人がいれば、相手が気付いていない案件をこちらから提案する人もいる。コンペが得意な人もいれば、入札のほうが得手、という人もいる。同じことの繰り返しになりますので具体例は挙げませんが、「うちのやり方はこれ!」と上司が決めつけていると、あたら生産性を上げるチャンスを見逃すことになります。

 「この人の個性は何か」をまず診断し、「すごく向いている」仕事や、人間関係(チーム編成)でアサインすれば、本人は楽しくやる気に満ちて仕事をするでしょうし、企業収益も上がります。無論、年収も上がるでしょう。それはちょっと長い目で見れば、経験やスキルによる成果を確実に上回るのです。これは我々のコンサルティングで幾度も実証されています。

 「経験」「スキル」よりもまず「個性」を重視する。それによって「仕事・組織と個人がマッチする関係性」を企業内にたくさん生み出し、個人も会社も成長する。我々relateはそう思っています。

「仕事=誰かに押し付けられた課題」という誤解

 その人の個性に合った仕事、人事をアサインする、というのは、「社員という人材資本を活用する」ための、もっとも有効かつ当たり前の手法です。この認識が一般的になれば、日本企業の生産性は爆謄します。我々relateもこの2年間、人の個性を活かし、よい関係性を組織にもたらすことで企業の生産性を向上するべく、様々な方法で様々な企業とのコンサルティングに取り組んできました。

 トライアルを始めたところは、さっそく成果が出ています。個性の診断にFFS理論が極めて実効性があることは既にいくつもの大企業で実証されています。人と人の相性を意識したチーム編成を実現したことで、例えば、不動産仲介会社、ドラッグストア、外食など多店舗展開している会社では約3カ月で生産性が上がっています。

 しかし一方で「個性」にがんとして目を向けない企業経営者の方、人事担当者の方がこれほど多いとは、と、呆然としたことも何度もあります。

 このような当たり前のことに、経営者も人事も目をつぶって「スキル」と「経験」に頼りきっているのは、なぜなのか――。これは我々が育ってきた社会の影響かもしれません。

 分断が進みつつあるとはいえ、日本はまだまだ均質的な社会です。余談ですが、この均質社会を創り上げたこと自体は、国際社会的に見ても驚異的な成果だと思います。

 しかし均質な社会に生きていることによって、どうも我々には「自分を活かすこと」への関心が低くなっているように思います。「自分の強みは何かを考え、それを最大限に発揮して人生を送りたい」と考えるのではなく、誰かが押し付けてくる課題に対応すべく「勉強」する。それが、社会人として求められる努力。

 多くの人がそういう意識だから、「自分の個性を理解して生かす」というプロセスを人生に組み込めないし、企業も人事制度に組み込もうとしないのではないでしょうか。

まず、自分を乗りこなすためのマニュアルを

 自分の個性を理解するのは、自分自身をいわば「乗りこなす」ために必須のマニュアルです。誰にでも適用できるマニュアルのほうが、人事の仕事は楽かもしれません。しかしそれは個人の能力を引き出すためのベストの選択ではないはず。

 我々は最初に、「自分」を知る、すなわち自分の個性に対する、正しいマニュアルを手に入れるべきなのです。企業も、社員の個性に基づいて仕事を考え、チームを編成する。手間はかかります。しかしその手間が自然なやる気を醸成し、お互いの欠点を補完し合う組織につながり、会社の生産性を大きく伸ばすのです。

 企業にとっての「個性」の重要性が最も分かりやすいのは、新卒の採用や中途入社者の「オンボーディング」のときです。次回は実例に基づいて、企業が「個性」に真っ正面から向き合う意味と効果をご説明します。

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